東京高等裁判所 昭和35年(ラ)434号 決定
ところで、執行文付与に対する異議事件の控訴裁判所が、民事訴訟法第五二二条第二項による仮処分たる強制執行停止決定をする場合に命ずる保証は、その決定の趣旨から反対の趣旨が認められるなど特別の事由がない限り、その裁判所の決定による強制執行停止によつて、債権者の被むることあるべき損害のみを担保するものであつて、第一審裁判所がした強制執行停止決定による強制執行の停止による損害までも併せて担保するものではないと解するのを相当とする。けだし、右保証を以て、右と反対に解釈しなければならない法律上の理由がないばかりではなく、この種の仮処分に関する裁判所の事務処理の実情を見るに、控訴裁判所にこの種仮処分の申請がなされるのは、通例、控訴申立と同時にまたはその直後、まだ控訴裁判所には訴訟記録の送付も行われていない段階のことであつて、裁判所は、申請人の提示する原判決の正本を主とした一通りの資料を検討するのみで、換言すれば、その申請前に債権者が被むつたかも知れない損害の如きは、そもそも、これを把握し得ない条件の下において、迅速に処理するものである関係上、保証の額の如きも、申請の時から控訴審における本案判決があるまでの期間を勘案し、その間強制執行を停止することによつて、債権者が被むることあるべき損害額を適宜考量して決定するのがせいぜいであつて、それ以上のことを期待し得ないのが通例であるからである。
(内田 鈴木貞 入山)